「パロはヨセフの兄弟たちに尋ねた。『あなたがたの職業は何か。』彼らはパロに答えた。『あなたのしもべどもは羊を飼う者で、私たちも、また私たちの先祖もそうでございます。』」　創世記４７章３節

エジプトに寄留することになったヨセフの兄弟たちは、エジプトの王に職業を尋ねられた時に、「しもべどもは羊を飼う者です。」と答えました。ヘブル語本文では、「羊を飼う者」ということばが冒頭に来ており、自分たちの職業を特に強調して語っていることが分かります。

ヨセフの兄弟たちが、パロに対してはっきりと自分たちの職業を伝えたのは、前もってヨセフがそう答えるようにと助言していたからです。ヨセフは兄弟たちに次のように語りました。「パロがあなたがたを呼び寄せて、『あなたがたの職業は何か』と聞くようなときには、あなたがたは答えなさい。『あなたのしもべどもは若い時から今まで、私たちも、また私たちの先祖も家畜を飼う者でございます』と。そうすれば、あなたがたはゴシェンの地に住むことができるでしょう。羊を飼う者はすべて、エジプト人に忌みきらわれているからです。」（創世記４６：３３〜３４）

 ヨセフは、エジプト人が羊を忌みきらっていることを知った上で、兄弟たちにわざわざエジプト人にきらわれる職業を答えさせたのです。普通ならば、外国に寄留する者は、現地の人になるべく嫌われないように気をつけるものです。どうして、ヨセフはこのような助言をしたのでしょうか。

それは、イスラエル人をエジプト人から切り離すためであったのです。イスラエルは、神の選民であるので、決して異邦人と混じり合ってはなりませんでした。もし、イスラエル人がエジプト人と共に住んだならば、やがてエジプトの宗教や文化に溶け込み、イスラエル人はエジプト人に吸収されてしまったでしょう。ですから、ヨセフは最悪の事態を未然に防ぐために、初めからエジプト人の忌みきらう職業を兄弟たちに答えさせたのです。

さて、あなたの職業は何でしょうか。世の人たちからそう尋ねられた時に、あなたはどのようにお答えになるでしょうか。神は、すべてのクリスチャンに、とても素晴らしい、しかし世が忌みきらう職業を与えておられます。それは、十字架につけられたキリストを宣べ伝えるという働きです。「神は、キリストによって、私たちをご自分と和解させ、また和解の務めを私たちに与えてくださいました。」（第二コリント５：１８）この務めこそ、私たちの本当の職業です。しかし、この世はこの務めを決して歓迎しません。それでも、神が、私たちに、この世からきらわれる職業を与えておられるのは、私たちをこの世から切り離し、私たちに聖潔を得させるためでもあるのです。

もし、あなたが本職を隠しているならば、それはなぜですか。この世に拒まれたくないからですか。もし、この世に溶け込むならば、必ずあなたの霊肉が汚されてしまいます。ですから、私たちは、ヨセフの兄弟たちのように、この世に対してはっきりと私たちの職業をあかししましょう。「私は福音を恥とは思いません。」（ローマ１：１６）